途中

14日目、哲学者の道は登るだけで哲学だった。ハイデルベルク日帰り

おはようございます。朝10時半、私はフランクフルトにいます。この街の中央駅のすぐそばに泊まっていて、今日はここから日帰りで出かける日です。

本当は、フランスのアルザス地方、ストラスブールまで足をのばすつもりでした。ところが調べると、ストラスブールまでの切符は1時間後の列車まで売り切れ。今日は臨機応変にいきます。行き先は、ドイツの大学町ハイデルベルクに変更です。

哲学者の道から見たハイデルベルク。ネッカー川にかかる古い橋と、山の中腹の古城。手前にはヤシの木

哲学者の道から見たハイデルベルク。ネッカー川にかかる古い橋と、山の中腹の古城。手前にはヤシの木

パリ行きの列車で、途中下車

乗るのは、フランクフルト発パリ行きの列車。これをマンハイムという駅で降りて、郊外電車に乗り換え、ハイデルベルクへ向かいます。

ただ、ユーレイルパスを使うと、こういう特急は1列車ごとに座席の予約料がかかります。マンハイムまでたった40分なのに、予約料は5.5ユーロ。めちゃくちゃコスパが悪い。今日は、渋いスタートです。

ハイデルベルク中央駅は、ホームが5面ほどある広い駅でした。駅前は広々としていて、フランクフルトのような雑然とした感じがない。ちょっと好きかもしれません。

「混雑エリア」を目指して歩く

中央駅から旧市街までは2キロほど、歩いて30分くらい。中央駅が街の中心から外れている、というのはヨーロッパの街あるあるです。私が旅先でいつも頼りにしているのが、Googleマップで黄色く塗られる「混雑するエリア」。そこを目指せば、だいたい街の中心に出ます。

近づくにつれて、テラス席のあるカフェが増えてきました。今日は土曜日です。そして黄色いエリアに入ると、さっきまでの静けさが嘘のように、人、人、人。目の前にはH&M。ちゃんと混雑エリアしています。Googleマップ、正確です。

アイリッシュパブで、ハイデルベルクのビール

お昼は、中心部のアイリッシュパブ「The Dubliner」のテラス席へ。まずはビール。地元ハイデルベルクで造られたというビールを、500ミリリットルで頼みました。グラスがおしゃれです。

ひと口飲むと、ちょっとクラフトビールっぽい。柑橘系の香りがしつつ、麦の感じも少し残っている。おいしい。幸せ。

The Dublinerのアイリッシュシチュー。牛肉とじゃがいも、にんじんがごろごろ

The Dublinerのアイリッシュシチュー。牛肉とじゃがいも、にんじんがごろごろ

料理は、アイリッシュシチュー。見た目は、カレーの具で味付けだけ変えたような感じです。こんな暑い日に頼むものではないけれど、牛肉がホロホロでめちゃくちゃおいしい。添えてあったバゲットはカリカリ。ドイツでこんなご飯にありつけるとは。アイルランド料理ですが。完食しました。ビールと合わせて、日本円で3,500円ほどでした。

食後にはジェラートも。ドイツ語で注文したら、ちゃんと通じました。語学をやっていてよかった、と思える瞬間です。

古い橋を渡って、哲学者の道へ

ジェラートで満足して歩いていくと、ネッカー川にかかる古い橋(アルテ・ブリュッケ)に出ました。長崎の眼鏡橋を、もっと長くしたような石の橋。機関車トーマスに出てきそうな橋、と言って伝わる人はたぶん少ない。正式な名前はカール・テオドール橋で、いまの橋は1786年から2年かけて、ネッカー川の砂岩で造られたそうです。

ネッカー川にかかる古い橋。赤い砂岩のアーチが連なる

ネッカー川にかかる古い橋。赤い砂岩のアーチが連なる

橋のたもとには、ライオンキングに出てきそうな、謎の像がありました。あとで調べると、これは橋の猿の像。手に鏡を持っていて、触ると幸運が訪れるという言い伝えがあるそうです。

それにしても、今日はめちゃくちゃ晴れ。雲は薄く、とにかく暑い。正直、曇りのほうが嬉しいくらいです。橋の上から見ると、背後の山の緑がきれいです。対岸の山の中腹に、1本の道が通っているのが見えました。あれが、哲学者の道でした。

橋を渡ってから、きつい坂道を10分ほど登ります。両側を壁と緑に囲まれた道で、入った瞬間、うわ、めっちゃ涼しい。小学校で、教室の窓の外にゴーヤを育てて、つるを這わせて涼しくする勉強がありましたが、まさにあれです。太陽の光を吸収してくれて、ありがとう。

きつい坂を登った先の景色

坂を登りきると、哲学者の道の始まりです。左手には、川越しに街が見渡せる。古い橋も、赤い屋根の街並みも、100年前、200年前もそんなに変わらなかったんだろうな、と思いたい。もちろん、この柵は昔はなかったでしょうけれど。

哲学者の道。川側に木のベンチが並び、反対側は緑に覆われた石垣

哲学者の道。川側に木のベンチが並び、反対側は緑に覆われた石垣

ここは、いろいろな国の観光客が来るしっかりした観光地でした。私のあとから登ってきた20歳くらいのドイツ人の若者たちは、息を切らしまくっていました。ここを観光するなら、ちょっと覚悟しておいたほうがいい。

道沿いにはベンチが並んでいて、ちょうど空いていたところに座って、街を眺めました。明るくて日差しは強いのに、木々に囲まれているせいか、体感では市街地より3〜4度涼しい。ところが、道の途中にあった案内板によると、この道は平均気温が市街地より1.5度ほど高く、ヤシの木まで育つ場所なんだそうです。涼しく感じたのは、木陰のおかげでした。

哲学者の道という名前の由来には諸説あります。昔は学生がみな最初に哲学を学んだので、学生のことを「哲学者」と呼んでいた。その学生たちが歩いた道だから、という説もそのひとつです。

帰りは、哲学者の道から外れて、階段で一気に下りました。実は、こっちの道のほうが雰囲気が好きかもしれない。好きかもしれない、と言っている時点で、もう好きなんですけど。こんなところに住めたら人生勝ちでしょ。階段だと下りはあっという間ですが、膝はもうガクガク。登るなら坂道、下りは階段がいいかもしれません。

古城は外から、学生牢は入口まで

川のほとりに戻ると、観光船が停まっていて、たくさんの人が乗っていました。対岸に目をやると、山の中腹にハイデルベルク城。めちゃくちゃかっこいい。あそこへ向かいます。その前に、アイスアメリカーノで一休みしたい。

川沿いから見上げたハイデルベルク城。森の山の中腹に、赤い砂岩の城跡が建つ

川沿いから見上げたハイデルベルク城。森の山の中腹に、赤い砂岩の城跡が建つ

城への道も、傾斜がおかしいだろうというくらいの急坂でした。写真だと伝わらないけれど、もう山登りです。お金さえあれば、旧市街から城を経て山の上まで登る登山鉄道もあります。

城のふもとまで来ましたが、入場料が高いのと、街を見渡すなら哲学者の道のほうがいいはずなので、中には入りませんでした。外から見るだけでも十分おしゃれです。城の歴史は13世紀までさかのぼります。17世紀の戦争でフランス軍に破壊され、1764年には落雷で火事にもなりました。中には1751年に造られた、22万リットル近くが入る巨大なワイン樽があるそうです。ハウルの動く城に出てきそうな城でした。

城から下りて、旧市街の広場へ。土曜のおやつ時で、人がめちゃくちゃいます。広場の水飲み場で水をペットボトルに汲んで飲むと、ヨーロッパにしては軟水っぽくて、日本人の口に合いました。

最後に寄ったのが、学生牢(シュトゥデンテンカルツァー)。大学が自分たちで学生を裁いていた時代に、罰として学生を入れた牢獄です。そこには、なぜか京都大学の名前が日本語で書いてありました。次の入場は40分後だったので、今回はあきらめました。ハイデルベルク大学ができたのは1386年。ドイツでいちばん古い大学です。

帰りの列車は、勝手に消えていた

帰りの電車では、乗ろうとしていた列車が来ませんでした。いつの間にかキャンセルされていて、時刻表からも消えている。来ないものはしょうがないので、次の電車に乗りました。ドイツでは、急なキャンセルがめちゃくちゃあります。

フランクフルト中央駅に着いたのは19時前。帰りは各駅停車のローカル列車。特急より30分ほど遅いけれど、ユーレイルパスで予約料なしに乗れます。行きもローカル列車にすればよかった。5.5ユーロあれば、ウィーンの物価ならケバブのサンドイッチが食べられたのに。勉強代です。

部屋で一息ついて、昨日スーパーで買っておいたダルムシュタットのビールを開けました。金具でカチッと留める栓のボトルで、ほろ苦さが強め。焼き鳥の砂肝やレバーに合いそうな味です。

この2日で、遅延、キャンセル、直前のホーム変更と、ドイツの鉄道のトラブルはひととおり経験した気がします。とはいえ、スウェーデンの田舎で6時間待ちぼうけを食らった身からすると、10分や20分の遅れなら全然許せてしまう。この旅で、許せる範囲がおかしくなりました。でも、広がったのは悪いことではないのかもしれません。

もうひとつ、部屋で調べ直したのが、満席だとあきらめたブダペストからブカレストへの夜行列車です。パスを使わず普通の切符として買う設定にすると、寝台の席が出てくる。もうちょっと冒険してもよかったかな。ちょっと悔しい。でも、しょうがない。今できることを楽しみます。

ポテト屋で、ポテトなしを頼む

夜9時すぎ、ドイツらしいものを買いに、中央駅にある「Frittenwerk」へ。ポテトの店です。選んだのは、ドイツ名物のカリーヴルスト。ソーセージにカレー粉をまぶして、ソースをかけたものです。

Frittenwerkのカリーヴルスト。カレー粉をまぶしたソーセージに、ピリ辛のソース

Frittenwerkのカリーヴルスト。カレー粉をまぶしたソーセージに、ピリ辛のソース

受け取って帰ろうとしたら、店員さんに何か言われて、ほかのお客さんまで「これだよ」と教えてくれました。カトラリーを取っていけ、ということだったようです。親切。

部屋で開けると、ハーブの効いたソーセージに、ちょっとチリっぽいピリ辛のソース。めちゃくちゃビールに合う。ただ、食べ進めて気づきました。ソーセージしか入っていない。私が頼んだのはソーセージだけで4.5ユーロ。「ポメス」をつけると7.9ユーロと書いてあって、そのポメスというのがフライドポテトでした。ポテト専門店に行って、ポテトなしのソーセージをひたすら食べる人になっています。でも、おいしい。幸せ。

土曜の夜のフランクフルト

ひと休みしてから、まだ見ていなかったフランクフルトの旧市街へ。ライトアップがきれいだと聞いて、あえて夜まで待っていました。東へ向かうつもりが、方向を間違えてマイン川のほとりへ。おかげで、川の向こうに立ち並ぶ高層ビルが見られました。ビルのてっぺんが、カラフルに光っています。

虹色に照らされたアイゼルナー・シュテーク。欄干に南京錠がびっしり、奥に高層ビル

虹色に照らされたアイゼルナー・シュテーク。欄干に南京錠がびっしり、奥に高層ビル

川沿いには、土曜の夜だからか、クラブミュージックががんがん流れていて、バーもめちゃくちゃにぎわっています。旧市街へ渡る歩行者用の鉄橋、アイゼルナー・シュテークは、虹色にライトアップされていました。最初の橋が開通したのは1869年。旧市街と対岸のザクセンハウゼン地区を結んでいます。欄干には、南京錠がこれでもかとかかっていました。何人分の南京錠なんだろう。

夜のレーマーベルク。石畳の広場の奥に、階段状の切妻屋根が並ぶ

夜のレーマーベルク。石畳の広場の奥に、階段状の切妻屋根が並ぶ

橋を渡ってまっすぐ行くと、旧市街の広場、レーマーベルクです。15世紀から市役所が置かれているレーマーの建物が並び、冬にはクリスマスマーケットの会場になる場所。土曜の夜で、ものすごい人でした。今日は眠らないんじゃないか、という感じです。

ところが広場を抜けると、急に人がいなくなって、しんとする。このメリハリも、土曜の夜のフランクフルトです。

宿の前の通りには、アフガニスタン料理やパキスタン料理の店が並んでいます。明日は朝が早いので、今日はここまで。


この日に出ていったお金:12,584円 50万円の残り:132,672円

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