19日目、IKEAが生まれた町へ。エルムフルトのIKEA博物館
おはようございます。ヘストヴェーダの朝です。
今日はこれから宿を出て、駅へ向かいます。目的地は、エルムフルトという町。IKEAが最初のお店を開いた町です。今日の見どころは、そこにあるIKEAの博物館。
昨日の夜に着いたこの宿、明るくなってから改めて見てみると、なかなか不思議な場所でした。

IKEA博物館の外観。白い建物の足元にV字の柱が並び、赤いコンテナが入口になっている
ログハウスの村で目を覚ます
宿は、いくつものログハウスが集まって、ひとつの小さな村を作っているような場所です。黒い木の壁に、白い窓枠。屋根は茅葺きです。芝生の真ん中には、集会場っぽい建物もある。
なんというか、ちょっと「ミッドサマー」感がなくもない。大丈夫かな、と少しだけ思いつつ、出発します。
ここはヘストヴェーダの郷土公園で、夏のあいだだけ、その中でユースホステルが営業しているのだそうです。古い建物が並んでいるのは、そのためでした。宿の壁には、この町の郷土の会を作った人たちを讃える、手書きの額も掛かっていました。ヘストヴェーダは人口1,700人ほど。昨日「アジア人なんて来たことあるのか」と思った町は、やっぱりそのくらいの小ささでした。

朝のユースホステルの敷地。茅葺き屋根の黒い木造の家が、大きな木と芝生を囲んで建つ
IKEAの町、エルムフルト
駅から乗ったのは、黄色と白の車体に赤いラインが入った地域列車です。車体には「KRÖSATÅGEN(クレーサトーゲン)」の文字。スウェーデン南部のスモーランド地方を中心に、1985年から走っている地域列車の路線網だそうです。窓の外には、森が続いていました。
エルムフルトの駅に着くと、ちょうどコンテナを積んだ貨物列車がやってきました。
この町は、人口1万7千人くらい(自治体全体で)の、わりと小さな町です。それでも「IKEAの町」として知られています。IKEAは1943年に、17歳のイングヴァル・カンプラードが通信販売の会社として始めたもので、最初の店舗がこのエルムフルトにできたのは1958年のこと。そこから、お買い得な家具の店として、やがて家具を超えた生活用品の店として、世界中に広がっていきました。
いまでも町には、IKEAの店舗のほかに、倉庫や事務所、商品開発の拠点、そして博物館まであります。会社の中枢の大部分が、いまだにこの小さな町に残っているわけです。

エルムフルト駅に停まるクレーサトーゲンの車両。黄色い屋根に赤いライン
1号店が、そのまま博物館に
駅を出て歩いていくと、目の前に現れたのがIKEA博物館です。この町だからこそある博物館で、世界中からIKEAのファンが訪れるそうです。
真っ白な、倉庫っぽい見た目の建物。もともとIKEAは倉庫型の店だったんだよな、と思い出します。最近でこそ、原宿や渋谷に都市型の店舗も出てきましたが。
エントランスは、赤いコンテナをそのまま使ったデザインです。ただのコンテナも、こうして入口に使われると、なんだかおしゃれに見えてきます。
館内のパネルによると、この建物こそが1958年10月に開いたIKEAの1号店。建築家が、外側を飾るV字の柱を入れるようカンプラードを説得したそうで、確かに建物の足元には、あのV字の柱が並んでいます。店として50年働いたあと、博物館に生まれ変わりました。開館は2016年です。
まずは外のテラス席で、コーヒーとシナモンロールをいただいてから、中へ入りました。
倹約の土地から、世界の家具へ
展示は、IKEAが生まれたスモーランド地方の暮らしから始まります。
スモーランドの人は、お金にとても慎重なことで知られている、とパネルにありました。持っているものが少ないなら、あるもので工夫するしかない。その抜け目のなさが一種の「機能的な創造力」になり、しぶとさが暮らしを支えた、というのです。暮らしは豊かではなかったけれど、バター作りだけは得意で、他の地方や外国にまで売れた。そこから「スモーランドのバターは全部」という言い回しが生まれた、という話もありました。赤い木の骨組みの中には、昔の台所の鉄のコンロや、バケツ、銅のやかんが置かれています。
その先は、IKEAの歩みです。1950年代、スウェーデンの経済が上向き、テレビや冷蔵庫、洗濯機に手が届くようになった時代。では、その新しい家を誰が家具で満たすのか。そこにカンプラードが目をつけて、この町に1号店を開いた、という流れでした。当時の雑誌はこの店を「家具とインテリアの夢のメッカ」と書いたそうです。

1950年代の部屋を再現した展示。青い椅子や黄色いランプ、木の飾り棚が並ぶ
年代ごとに当時の家具や部屋が並び、歴代のカタログもずらり。カタログは70歳で“引退”。2021年版が、最後の紙のカタログになったそうです。
カンプラードの仕事部屋の再現もありました。スイスの自宅にあった仕事部屋のコピーで、傷だらけの松のテーブルで、たくさんの打ち合わせをして、たくさんの手紙を書いたのだとか。壁には彼の言葉がありました。「立派な車も、肩書も、仕立てた制服も、ステータスの印はいらない。自分たちの力と意志を頼りにする」。

カンプラードの仕事部屋の再現。木のテーブルと籐の椅子、書類で埋まった棚
2階で、ミートボールとビール
博物館の2階に上がってきました。2階は、IKEAの家具と照明で満たされています。網の向こうには、下の階も見えます。
ここのレストランで食べるのは、デンマークのビール、カールスバーグ。そして、その横にミートボールとマッシュポテト、グリーンピース。リンゴンベリーのジャムと、きゅうりのピクルスも添えてあります。
では、いただきます。

博物館2階のレストランのミートボール。マッシュポテト、グリーンピース、リンゴンベリー、ピクルス添え
お腹を満たしたあとは、少し町を歩きました。博物館のまわりには、「IKEA of Sweden」の事務所の案内板が立っています。高いところから線路を見下ろすと、コンテナを積んだ貨物列車が停まっていました。
帰る前に、町のスーパー、COOPで今夜の食料を買い込みました。
ヘストヴェーダに帰って乾杯
というわけで、宿に帰ってきました。軽く飲みたいと思います。
おつまみは、エストレラのサワークリームオニオン味のポテトチップス。お酒は、スウェーデンのビール、マリエスタッズの「クラスII」。窓辺に並べて、いただきます。
あー、おいしい。おいしいね。最高。幸せだわ。
晩ごはんは、COOPで買ってきたタリアテッレのカルボナーラです。パンも買ってきたので、カルボナーラのソースに漬けて食べます。ハイネケンも開けました。
夜9時を過ぎても、外はまだ明るい。宿の黒い家の向こうの空が、夕焼けに染まっていました。

夕暮れのユースホステル。黒い木の家の向こうの空が、オレンジ色に染まる
宿のそばには湖があります。ヘストヴェーダの中心には、郷土公園のすぐ隣にリラ・シェーという湖があるそうなので、たぶんここです。岸には浮き輪とベンチ。水面には、森と夕焼けの空が映っていました。
明日はこの宿を出て、北へ。いよいよストックホルムに戻ります。

宿のそばの湖。浮き輪とベンチの向こうで、夕焼けの空が水面に映る
この日に出ていったお金:18,916円 50万円の残り:75,477円