途中

7日目、「命のビザ」の町カウナスへ。バルト三国の最後の日

朝起きると、声がガラガラでした。ホステルの空気が乾いていたせいだと思います。初めての8人部屋でしたが、眠りはぐっすりでした。

バルト三国を旅する、最後の日です。

首都の中にある「共和国」

ヴィリニュスの一角に、「ウジュピス共和国」と名乗る地区があります。どこの国からも承認されていない、自称の独立国家です。1997年の4月1日、わざわざエイプリルフールの日に独立を宣言したそうです。

宿を出て、その「国境」へ向かいました。川を挟んで、手前がヴィリニュス、向こう側がウジュピス共和国。境目には、国名を書いた看板が立っています。

中に入ると、柱の上にラッパを吹く天使の像が立っていました。「ウジュピスの天使」と呼ばれる、この共和国のシンボルです。2002年に置かれたものだそうです。

壁には、この「共和国」の憲法がいろいろな言語で掲げられていて、日本語訳もありました。翻訳は50以上の言語にのぼるそうです。読んでいくと、最後のほうは怒涛の熱さです。

ウジュピス共和国の憲法が書かれたプレート

ウジュピス共和国の憲法が書かれたプレート

壁には、手のひらに穴があいたようなマークも描かれていました。はんぺんが付いた手みたいに見えるそれが、どうやらこの「国」の旗のようなものです。建物にはその旗が、リトアニアの国旗と並べて掲げられていました。小さな広場の地図を見ると、この国は24分あれば歩いて一周できるそうです。アーティストが集まる地区で、アートも盛んなのだとか。

次の予定があるので、ほどほどで共和国にお別れしました。

ゆうべライトアップされていた城が、朝の青空の下に、きれいに見えていました。中も見たかったのですが、予定の都合で、外から眺めるだけで満足して次へ。

赤レンガの古い防壁に沿って、急な坂を上りました。かなりきつい勾配です。壁の案内板によると、17世紀の初めに造られて、半ばには壊されたという歴史があるようでした。

朝9時ごろの旧市街は、人がほとんどいませんでした。ちょうど教会の鐘が鳴っていました。それでも街並みは好きです。どこか、進撃の巨人に出てきそうな雰囲気がありました。駅へ向かう途中の建物の壁には、ゼンマイ侍に出てきそうな大きな壁画もありました。

杉原千畝の町で

列車の1等車でカウナスへ。ユーレイルのパスは2等車のはずなのですが、ネットで予約するときに、なぜか1等車を選べました。座席にはコンセントがあって、水も配られて、快適な移動でした。車両は静かにしなければいけない「クワイエットゾーン」で、車内では一言もしゃべれませんでした。

カウナスの駅に降りると、自転車を連れた人がたくさんいました。駅は町の外れにあって、中心部までは歩いて20分ほど。地方都市あるあるかもしれません。

杉原千畝が住んでいた家に向かう途中、たまたま小さな丘を見つけました。観光名所でもなんでもない場所ですが、そこからは駅と線路がよく見えました。

カウナスの高台から見下ろした街と線路

カウナスの高台から見下ろした街と線路

カウナスは、第二次世界大戦中に杉原千畝が「命のビザ」を発給した町です。当時のリトアニアは、本来の首都ヴィリニュスをポーランドに押さえられていて、1920年から1939年まではカウナスが臨時の首都でした。日本の領事館もこの町に置かれていて、1940年の夏、杉原千畝はここで2,000通以上の通過ビザを書いたそうです。記念館の杉原ハウスを訪ねましたが、この日は休館日でした。

建物は思っていたよりずっと普通の家で、まわりの家並みにすっかり溶け込んでいました。

カウナスの杉原千畝記念館の前に立つ、「希望の門・命のヴィザ」と書かれた標柱

カウナスの杉原千畝記念館の前に立つ、「希望の門・命のヴィザ」と書かれた標柱

中には入れなかったけれど、門の前に立つ「命のヴィザ」の標柱だけ、写真に撮りました。

赤レンガの城と、0.7ユーロのバス

町を歩きました。面白い壁画があって、思わず撮りました。カウナスでも、緑色のトロリーバスが走っていました。

通りの先に見えてきたのが、高さ50メートルのドームがある聖ミカエル大天使教会です。ロシア帝国の時代、1890年代に、カウナス要塞の兵士たちのための正教会として建てられたそうです。近くで見上げると、なかなかのいかつさでした。教会のまわりは、漢字の「回」のように四方を道が囲んでいて、すてきな広場になっています。

昼は中華料理店で、ビールとクリスピーチキン。ビールは4.1ユーロ、チキンは6.65ユーロ。リトアニアは物価が安くてありがたい。日本と比べると少し高いかもしれませんが、ここまでの北欧と比べればずっと楽です。ビールは地元のシュヴィトゥリスという銘柄で、少しアサヒに近い、麦の香りのする味。とてもおいしかったです。チキンはご飯とセットで、日本のランチとほとんど変わらない感覚でした。

中華料理店に置かれていたビールの案内。4.1ユーロ

中華料理店に置かれていたビールの案内。4.1ユーロ

歩いていると、昔はアパートだったのかなと思う、ごつい廃墟がありました。それから、赤レンガの建物が手前から奥までずらりと並ぶ、美しい路地。

ヴィリニュス通りという、別の町の名前がついた通りも歩きました。首都ヴィリニュスへ向かう道だった、古い通りだそうです。道幅が広い石畳で、日本の旧街道のような雰囲気があります。この日は空がよく晴れていて、景色がすっと開けて見えました。

道ばたの白いクローバーでは、クマバチがのんきに蜜を吸っていました。私も、刺されないだろうとのんきにカメラを向けていました。

そして、レンガでできたカウナス城。日本の城を見慣れていると、赤レンガの城はかなり面白い建物です。ドイツ騎士団に対する守りの拠点で、14世紀には騎士団に包囲され、落とされたこともあるそうです。向かいには聖ゲオルギ教会。城の向かいにはベンチがあって、城の全体を眺めながら休憩できるようになっていました。

白い建物が目に入って撮ってみたら、市庁舎の前で結婚式をやっていました。

カフェで一息ついたときには、街歩きでかなり疲れていました。のどが渇いて入った店で、カフェラテを1杯。ワルシャワ行きのバスまで、ちょうど少し時間がありました。カウナスは、もう十分に堪能しました。

店を出ると、空が合成した背景みたいにきれいでした。

バスターミナルまでは市内バスで0.7ユーロ。めちゃくちゃ安いです。アプリを入れると安くなると聞いて入れてみたら、バスの側面に貼られたQRコードを読み取って乗る仕組みでした。座席にはUSBのポートがありましたが、Aタイプ。飛行機でもそうですが、そろそろ全部Cにしてほしい。10分ほどで、バスターミナルに着きました。

国境を越える夜のバス

カウナスからワルシャワへは、長距離バスで21.6ユーロ(3,845円)。バスは定刻どおりにやってきました。座席には、まさかの液晶パネル付き。ここから5時間ほどかけて、リトアニアを出てポーランドに入ります。車内では紅茶のサービスがあって、それが最高でした。

長距離バスのカップホルダーに置いた紙コップ。タリン、リガ、ヴィリニュスの地名が描かれている

長距離バスのカップホルダーに置いた紙コップ。タリン、リガ、ヴィリニュスの地名が描かれている

カップに描かれていたのは、タリン、リガ、ヴィリニュス。ちょうど通ってきた3つの首都です。旅の締めくくりにしては、できすぎたデザインでした。これで、バルト三国の旅はおしまい。次はポーランドです。

ワルシャワに着いたのは、夜10時ごろ。お腹がぺこぺこだったので、宿に向かう前に、この時間に唯一開いていたマクドナルドに直行しました。チキンバーガーとチキンラップのセットで、19ズウォティでした。値段の感覚は、日本とだいたい同じです。

ワルシャワに着いた夜の道

ワルシャワに着いた夜の道


この日に出ていったお金:16,094円 50万円の残り:219,004円

← 6日目 / 8日目へ →