1日目、ストックホルム。ベンチの多い街は、お金のない旅人にやさしかった
予算は50万円。期間は20日間。ヨーロッパを鉄道でひとりでまわる旅が、この日から始まりました。
渋谷から羽田へ向かい、チェックインの列に50分並んで、北京で乗り継ぎ。LINEもInstagramもつながらない空港で時間をつぶし、ストックホルムのアーランダ空港には、その日のうちに着きました。乗り継ぎまでのことは北京での乗り継ぎの記事に書きました。
18分で、空港から街の真ん中へ
空港からはアーランダエクスプレスで中央駅へ。長いエスカレーターを下りた先の黄色い壁には、「Yes, non-stop to Stockholm C.」「18min Every time.」と大きく書かれていました。空港からストックホルム中央駅まで、途中に止まらず18分で結んでいる列車です。
ホームへ続くトンネルは、まるで洞窟みたいな形をしていました。
先に買っておいたユーレイルのパスで乗れたので、この区間は追加のお金がかかっていません。ちなみに普通に切符を買うと、片道230クローナかかります。恐ろしく高い、スウェーデン。
パスで乗るときに、どうやってチケットを見せればいいのか。出発前はそこがよく分かっていなかったのですが、この列車で答えが分かりました。ユーレイルの「Rail Planner」というアプリで旅程を確定すると、QRコードが出てきます。それを乗務員さんに見せれば、もう乗っていいよ、という形でスムーズに済みました。
確認されるのは、アプリに出てくるQRコードと、旅程の画面にパスの有効期間がちゃんと入っているかどうか。この2つを見せられれば、乗車券として認めてもらえるようです。

ストックホルムで乗り降りした駅の地下ホーム
車内は、成田エクスプレスのグリーン車かと思うくらい普通席が快適でした。座面はふかふかで、前の座席との間にもゆとりがあります。ひじ掛けが木でできていて、それだけで温かみを感じました。
列車は最高時速200キロで走ります。窓の外を景色がどんどん流れていくのが、とにかく気持ちよかったです。
着いて最初に知ったのは、物価だった
中央駅に着いたのは、夕方6時半ごろでした。お腹が減っていたので、ストックホルムでいうところのマクドナルド的な、でももう少し高級感のあるハンバーガー屋に行くことにしました。
駅前のMax Burgerです。注文はタッチパネルで、セットを大きいサイズにして、飲み物はコカ・コーラ。クラシックハンバーガーのセットで129クローナでした。日本のVisaカードがここで使えるのか、試しに決済してみると、ちゃんと通りました。
カードの請求を見ると約2,000円です。

Max Burgerのクラシックハンバーガーとポテト
食べ終わって、また歩き始めました。
道路を見ると、車線の横には必ず自転車レーンがあって、自転車のマークが描かれています。あとで気づいたのですが、自転車専用の信号まであります。自転車にやさしい街なんだな、と感じました。
東京駅の赤レンガのような質感の建物もあって、ストックホルムは歩いているだけでおしゃれです。
中央駅の表玄関も、重厚感があって立派でした。この駅は1871年に開業していて、ここからスウェーデン各地へ、さらにノルウェーなどの国へ向かう列車も出ているそうです。
旧市街までは、Googleマップで見ると歩いて20分くらい。電車に乗っても、駅から歩くことを考えたらそう変わらないので、歩くことにしました。
「破産しちゃうよ」。歩きながら、思わず口に出ていました。もうちょっと物価が安くならないものか。ここに2〜3週間いたら、50万円では絶対に足が出る。とてもじゃないけど収まりません。
スウェーデンでもマクドナルドは普通に人気のようで、看板には、ビッグマックのセットが85クローナと出ていました。日本円で1,500円くらいでしょうか。ビッグマックのセットが1,500円を超える世界です。日本なら、ちょっといいハンバーガーが食べられてしまいます。
遠くに、とがった塔のある大きな建物が見えました。あれがたぶん、ストックホルムでいちばん有名な観光地のひとつ、市庁舎です。
夜7時の旧市街は、まだ昼みたいに明るい
旧市街へ向かって、橋をひたすらまっすぐ渡っていきます。時計は夜7時を回っているのに、太陽は昼の1時か2時くらいの高さにあります。体内時計が狂いそうでした。この国の人たちは狂わないのでしょうか。
橋の上では、車の音にまじってカモメがよく鳴いていて、それがまたいい感じでした。
渡りきると、道はさっそく石畳に変わります。向こうのほうはすごい人出で、どうやら観光地のようです。左側はちょうど工事中だったので、カメラは右側ばかりに向けておきました。見せたくないものは見せない主義です。
旧市街のガムラスタンには、17世紀から18世紀の建物が立ち並んでいます。よくこの街並みを残しているな、と思いながら歩きました。

ストックホルムの旧市街ガムラスタン。ストールトルゲット広場に面して、赤や黄色の古い建物が並ぶ
たどり着いたのは、ストールトルゲット広場。ストックホルムでいちばん古い広場です。ぐるりと360度、カラフルな建物に囲まれていて、本当におしゃれな場所でした。
振り返ると、目の前の薄いピンク色の建物がノーベル博物館です。もとは証券取引所だった建物で、いまは博物館のほかに、スウェーデン・アカデミーなども入っています。
少し歩くと、立派な教会が現れました。ストックホルム大聖堂(Storkyrkan)です。記録に初めて出てくるのは1279年。ストックホルムでいちばん古い教会で、800年近い歴史があります。2010年には、ヴィクトリア皇太子の結婚式もここで行われたそうです。近くには、グスタフ3世のオベリスクも立っていました。
マリオなら登れそうな、いちばん狭い通り
裏路地に入っていくと、道幅がどんどん狭くなってきます。そして行き当たったのが、「ストックホルムで一番狭い通り」でした。
マルテン・トロッツィグ小路(Mårten Trotzigs gränd)という名前の階段の路地で、いちばん狭いところの幅は90センチほど。マリオなら壁キックで上まで登れそうな幅でした。

ストックホルム旧市街の細い路地。両側の建物の壁が迫り、奥まで石畳が続く
その先で、スーパーのCOOPを見つけました。スウェーデンのスーパーの中では、比較的安いチェーンらしいです。ここで夜行列車で飲むビールとつまみを買っておくことにしました。
買ったのは、カールスバーグのビールと1リットルほどの水、プリングルス、それに翌朝用のパンを少し。本当に必要最低限です。
スウェーデンでは、アルコール度数3.5%を超えるお酒は、システムボラーゲットという国営の店でしか買えません。手に取ったカールスバーグは、ちょうど3.5%でした。なかなか厳しいものがあります。
旧市街で、1日目をふり返る
夜9時前、旧市街の石畳の通りで、今日一日をふり返ってみました。
まず、空港に着いた時点で、とてもきれいな空港だったこと。この街はきっと清潔なんだろうな、と思いました。
アーランダエクスプレスは、普通席なのにふかふかで、しかも速い。10キロ以上離れた市内まで、20分ほどで着いてしまいました。
中央駅を降りると、歴史を感じる建物がそびえ立っていて、そこから20分ほど歩けば旧市街です。人も穏やかでした。暮らすにはどうか分かりませんが、少なくとも観光するには、すごくおすすめの街だと思いました。
タダで座れる場所が、いくらでもある
この街を歩いていて一番印象に残ったのは、ベンチの多さです。公共の場所への意識が高くて、ちょっと休みたいときに、お金を払わずに座れる場所がどこにでもある。私みたいな貧乏旅行者には、本当にありがたい街でした。
ちょっと休みたいな、と思うくらいの間隔で、ちゃんとベンチが置いてあるんです。お金がなくても、街並みを眺めているだけで楽しめる。ストックホルムには、そういう楽しみ方がたくさんあります。
その一方で、公衆トイレは5クローナかかります。トイレだけは、ぎりぎりになってから探さないほうがいいです。
夜9時、市庁舎はまだ夕方の光の中
旧市街を出て、夜行列車に乗るために中央駅のほうへ戻りながら、さっき遠くに見えた市庁舎に寄り道しました。
途中にあった案内板によると、市庁舎は1911年から1923年にかけて建てられたもので、建物を包み込む水とうまく調和するように設計されたそうです。設計したのはラグナル・エストベリという建築家で、毎年ノーベル賞の授賞式のあとの晩餐会は、この市庁舎の「青の間」で開かれています。
階段の手すりの向こうに塔の先が見えていて、近づくにつれて、ようやく全体の姿が見えてきました。
時刻は夜9時。さすがに日は傾いてきましたが、まだまだ夜とは呼べない明るさです。
水辺には、観光船が出るのか、バイキングの飾りを付けたきらびやかな船が並んでいました。
夕方、西日が水辺を照らしていました。対岸の建物も西日を受けて、かなりいい感じになっています。ちょうど目の前を自転車が通り過ぎていって、ロマンチックな光景でした。
日常が少し幸せになるような仕掛けが、街のあちこちにある。ストックホルムはそういう街だと感じました。1日しかいない旅人の、かなり適当な感想ですが、許してください。
寝台ではなく、座席で夜を越す
戻ってきた中央駅は、ニューヨークのグランドセントラル駅を思わせるような、豪勢なたたずまいでした。
その夜は宿に泊まらず、ストックホルム中央駅から北へ向かう夜行列車に乗りました。10番ホームに行くと、列車はもう入線していました。左を見ても右を見ても、車両がずっと連なっています。
途中の車両をのぞくと、はしごが見えました。二段ベッドで一部屋を何人かで使う、寝台の車両のようです。私が乗るのは21号車。寝台ではなく、本当に座席だけの車両です。
座席指定料は40クローナ(632円)。これがこの日の「宿代」です。

一晩を過ごした夜行列車の座席車両
席は、窓がかなり大きく見える場所でした。足もとには木目のテーブルがあって、ドリンクホルダーも付いています。たぶんコンセントらしきものもありました。テーブルをたたむと、その下に網の荷物入れがあって、これもいい感じです。
夜10時を回ったころ、列車が動き出しました。ここから、夜行列車の旅が始まります。

夜行列車の座席テーブルに置いた、プリングルスとカールスバーグの缶ビール
旧市街のCOOPで買ったカールスバーグを開けて、プリングルスをつまみに、ひとりで晩酌です。旅の1日目は、北へ走る列車の座席で終わりました。
この日に出ていったお金:190,390円(航空券の往復、ユーレイルのパス、羽田までの電車代505円を含む) 50万円の残り:309,610円