4日目、眠れないまま着いたヘルシンキ。夜11時の空はまだ明るい
日付が変わって4日目。真夜中なのに、窓の外はうっすら明るいままです。車内も昼光色のライトがこうこうと照っていて、まったく眠れません。
照明の消えない夜行列車
眠れないので、窓の外をぼんやり眺めていました。車窓はひたすら針葉樹の森。数年前に東京のミニシアターで観た、フィンランドのホラー映画を思い出しました。少女が森で卵を拾って、部屋でこっそり育てる話です。この鬱蒼とした森を見ていると、ああいう物語が生まれるのも分かる気がしてきます。
夜中の2時半。夜行列車の車内の照明は、まったく暗くなる気配がありませんでした。スウェーデンの夜行列車と比べると、少なくとも2等車のサービスは天と地の差です。
朝6時。外は厳密には一度も真っ暗になっておらず、1日がずっと続いているような感覚でした。ほとんど眠れていません。ムーミンの国で、無眠。窓の外に湖が見えて、朝日を照り返していました。それで少しだけ元気が出ました。
6時45分ごろには、湖のほとりに遊園地が見えました。夏しか営業していないらしく、それでどうやって採算をとっているのか、よく分かりません。
列車はタンペレに止まりました。世界に一つしかないムーミン美術館がある町です。ただ、ムーミンはまったく履修していないので、ここはスキップしました。
12時間以上、座ったままの移動はしんどい。10時40分ごろ、ほぼ時間どおりにヘルシンキ中央駅に着いたころには、寝不足が一周回って妙にハイになっていました。
花崗岩の駅と、高いトラム
駅のまわりは工事中で、とにかくうるさかった。それでも駅舎は立派で、高級ホテルのようです。この駅はエリエル・サーリネンの設計で、1919年に開業しました。外壁はフィンランド産の花崗岩でできているそうで、重厚に見えるのも納得です。
市内の移動は、トラムが便利でした。アプリからクレジットカードで切符が買えて、画面にQRコードが出ます。ただ、1回乗るだけで日本円にしてほぼ500円。高い。それでも買い忘れて不正乗車と判定されると罰金なので、乗る前に買っておきます。アプリの経路検索を使うと、いまどの停留所にいるのかも分かりました。
高い。でも、来たら一度は食べてほしい
宿のユーロホステルは、トラムの停留所から近くて便利な場所でした。荷物を置き、ムーミンショップや、ずらりと並ぶレンタル自転車を横目に、オールドマーケットへ。オレンジ色のテントが並んでいて、ホットドッグや野菜、ジャムの屋台が出ていました。
名物のサーモンスープを食べるつもりでしたが、一番おいしそうな店で見つけたのはサーモンプレート。4ユーロ足して、ノルウェー産ではなくフィンランド産のサーモンにしてもらいました。合わせて29ユーロ、日本円で約5,000円です。サラダにディルのソース、ポテトとトマトまでのった、ボリュームのある一皿でした。

オールドマーケットで食べたサーモンプレート。サーモンとポテト、トマトにソースがかかっている
合わせたのは、インディアペールラガーの小瓶。濃厚で、柑橘のような香りがしました。
サーモンはホクホクで、意外と甘いディルソースがその甘みを引き立てていました。高いのは確かです。それでも、ヘルシンキに来たら一度はここのサーモンを食べてほしい。そう思える味でした。
サラダの生野菜が気になる人もいると思います。フィンランドは水道水がそのまま飲める国で、宿にも「水筒に水道水を入れてね」と書いてありました。安心して水道水を飲める、珍しい国です。

「水筒に水道水を補充できます」と書かれたステッカー

ヘルシンキの路面電車の停留所
バスで1時間、古い工場の映画館へ
午後はバスターミナルから赤いバスに乗って、ヘルシンキから1時間ほどのカルッキラという町へ行きました。正確には1時間10分くらい。目当ては、映画館「キノ・ライカ(Kino Laika)」です。

映画館キノ・ライカに置かれていた、映画「Cinéma Laika」のポスター
バス停からは、「TEATTERI(劇場)」と書かれた案内に従って歩くだけ。緑が多くて、雰囲気のいい町です。
キノ・ライカは、フィンランドを代表する映画監督アキ・カウリスマキが、作家のミカ・ラッティと一緒に開いた映画館です。日本好きで、小津安二郎の作品を愛していることでも知られる監督です。オープンは2021年10月。古い製鉄所の敷地にあった、ホーロー加工の工場の建物を使っています。

キノ・ライカの館内。古い映写機が置かれている
映画館を出て、近くのベンチに座りました。このあたりはもともと鉄工業で栄えた工場地帯で、見回すと赤レンガの建物が所狭しと並んでいます。産業が廃れて空き家になっていた工場を、映画館やホテルとして生まれ変わらせた場所なのだそうです。川が流れていて、穏やかな時間が流れていました。

元工場の赤レンガの建物。大きな窓が並ぶ長い廊下
「TUPAKKAKATOS」と書かれた小屋は、フィンランド語で喫煙所という意味らしい。確かに灰皿が2つ置いてありました。建物の外には、赤さびだらけの機械が無造作に置かれています。たぶん、製鉄所だったころの名残です。

赤レンガの壁に立てかけられた自転車

工場の敷地に残っていたトロッコとレール
日が落ちてきた、と言いたいところですが、実際には少し傾いただけ。日差しが弱くなったので、ようやくサングラスを外しました。予約しておいた帰りのバスで、ヘルシンキへ戻ります。
いつ一日が終わっているのか分からない
ヘルシンキに戻ったのは夜8時半。カンピ礼拝堂も美術館も、もう閉まっていて外から見るだけでした。
カンピ礼拝堂は、茶色い木でできた丸い建物です。言い方は悪いのですが、最初はゴミ箱のような形だと思いました。2012年にできた「静寂の礼拝堂」で、街の真ん中で静かに過ごすための場所だそうです。入り口には日本語の案内もありましたが、「夏の間には、教会の向こう側の入口」。直訳すぎて、何を言いたいのか一瞬分かりませんでした。
すぐ近くの現代美術館アモス・レックスも、この日はもう閉まっていました。おしゃれなカフェが並ぶ通りの先には、ヘルシンキ中央駅が見えます。ビルの上の気温表示は21度。観光地はほとんど閉まってしまったので、宿に戻ることにしました。
途中、街のあちこちでムーミンを見かけました。デパートの壁には「MOOMINWORLD 180 KM」の文字。ヘルシンキから180キロほど北に、ムーミンのテーマパークがあるそうです。昨夜の夜行列車は、その近くの駅を通っていたらしい。とはいえ、着くのは開園前の時間。今回は見送りました。
宿のエレベーターは、ドアを自分の手で開けるタイプでした。日本では見たことがありませんが、ヨーロッパでは珍しくないそうです。

ユーロホステルのエレベーターの操作盤
宿に戻ったのは午後11時。それでも、外は明るいままです。日が沈むのは23時から0時くらいで、夜になっても真っ暗にはならず、薄暗いまま朝になります。本当に、1日がいつ終わっているのか分かりません。通りには、もう人影がほとんどありませんでした。
近くの24時間営業の店で、晩酌用のビールを探しました。ただ、度数3.5%を超えるお酒は21時までしか売っておらず、棚には南京錠がかかっています。3.5%以下のビールを1本買いました。3.5%以下はお酒の扱いではないのか、ノンアルコールに近い扱いなのか。そのあたりはよく分かりません。まあ、買えたのでよしとします。
この日に出ていったお金:19,803円(うち映画館 3,382円) 50万円の残り:265,094円